隣の客は秋なす食う嫁だ
秋なすの盛りも終盤を迎えております。
高知はナスの生産量が全国一位なのだそうです。そういえばウン十年前にそんな勉強したような、ええと、通年温暖な気候を利用したビニールハウスでの促成栽培だっけ? となつかしく思い出しました。
そんなナス王国高知で暮らすことになるとはつゆほども思わなかった当時ハナタレ小学生も、いまや秋なす食わすなでおなじみの嫁でございます。
ひとくちにナスといっても種類はたくさんありまして、こちらは一般的な長なすよりもさらに長い、全長40センチを超える「大長なす」と呼ばれる品種です。
頭からおしりまでの太さにあまり変化がなく、筒状をしております。固めの皮をあぶって剥がすと、なかの果肉はやわらかく汁気たっぷり。香ばしい焼きなすにはかつぶしと醤油だけでじゅうぶんです。熱々のうちにハフハフとお召し上がりください。
こちらはかわいい「小なす」ちゃん。あらあら、これはナスの赤ちゃんかしら? といった風情ですが、これで完成のサイズです。鶏卵とうずらの卵みたいなものですね。
さきほどの大長なすとちがって、そのまま漬けものにできるほど果皮も果肉もやわらかいのが特徴です。油吸いも適度なので、今回はもっちりした食感の白身魚のすり身団子を詰めて揚げ浸しにしてみました。甘めのおだしが染みて、ほっこり秋の味。
三種の秋なす料理のトリは「米なす」。どーんとおおきく丸々とふとって、ヘタはくすんだ緑色をしています。
突然ですが、ここで豆知識。
ナスの歴史は古く、原産国インドからシルクロードを経由して中国へ渡ったのが4世紀ごろ。5〜6世紀にはすでに盛んに栽培されていたそうです。そしてすくなくとも8世紀以前に日本に伝わったものが各地で改良され、いまの様々なナスの品種になったのだとか。
ところがこの米なすはちょっと遠まわりしまして、16世紀以降中国からアメリカに渡り、その後日本に輸入された「ブラックビューティー」という品種がルーツなのです。そう、米なすの「米」ってアメリカのことなんですね。
そんなナス界の黒船こと米なすの特徴は、身崩れしにくいしっかりした肉質です。ねっとり肉厚の果肉は濃いめの味つけにも負けず、ピリ辛で刺激的な四川風麻婆にぴったり。大ぶりのさいの目に切ったお豆腐といっしょに炒め合わせました。
ちなみに今回の記事タイトル、秋なす料理を試食しているときに思いついた早口言葉のもじりですが、店長(夫)はぴくりとも笑いませんでした。アレレ?
たぶんよく聞こえなかっただけなので、つぎはもっとおおきな声で言ってみようと思います。
今回掲載のお料理 ※ 仕入れにより価格変更、ご用意できない場合もございます。
『秋焼き長なす』380円
『南国育ち 揚げだし小なすのすり身詰め』480円
『れいほく育ち 米なすと豆腐の四川風麻婆』680円